ドビュッシー：夜想曲ショスタコーヴィチ：ヴァイオリン協奏曲第1番イ短調作品77
ベートーヴェン：交響曲第5番
＊ソリストアンコール
バッハ：無伴奏パルティータ第2番第3曲「サラバンド」
＊アンコール
ドビュッシー（ビュッセル編）：
小組曲第2曲「行列」
指揮：ティエリー：フィッシャー
ヴァイオリン：バイバ・スクリデ
女性合唱：岡崎混声合唱団
タコ先生に開眼するきっかけとなったヴァイオリン協奏曲第1番を聴く日がようやくやってきました。
朝からよいお天気。
思わず愛知県芸術劇場コンサートホールに行きかけたけど、今日は中京大学文化市民会館オーロラホールです。
席は２階の5列目中央やや右寄りでした。
開演前から何となくいやな予感はあったのですが、見事的中！
ああ、もう本当に五月蝿かった。。。ふぅ。。。
演奏の間中、ずーっと、どこかでなにがしかの音がしていましたよ。
特にプログラム前半は、子供はしゃべるわ、アラーム時計は鳴るわ、携帯は鳴るわ、プログラムは落ちるわ・・・聴いていても集中力が途切れて大変でした。
まず１曲目、ドビュッシーの『夜想曲』
「シレーヌ（海の精）」を彷彿とさせる白いひらひらのドレスに身を包んだ岡崎混声合唱団の方々が登場。
曲は、破綻もなく無難にまとまった感じでした。
「雲」の色はにび色とオレンジがまざったような。
「祭り」そんなに悪ふざけはなく節度が守られている。
ただ、合唱があまり神秘的ではなかったのが残念。
もっと聞こえるか聞こえないかの小声で始まって、じわじわと盛り上がって欲しかった。
第3楽章、いきなり「シレーヌ」ならぬ、いわゆる「サイレン」のように合唱が始まったのでびっくりいたしました。
そして2曲目、本日の（私にとっての）メイン・プログラムである、タコ先生のヴァイオリン協奏曲。
視界の右端に動き回る二人の子供の姿が入るのが気になってしかたない中で演奏は始まりました。
第1楽章は、驚くほどゆったりとしたテンポで始まりました。
いつも聴いているCD（ムラヴィンスキー、レニングラード・フィル、オイストラフ／ヤルヴィ父、スコティッシュ・ナショナル・オーケストラ、リンダ・モルドコヴィチ／スヴェトラーノフ、ソビエト国立交響楽団、レオニード・コーガン）とは似て非なるものといった感じ。
ヴァイオリンの音もなんかこう、出きっていない、かすれたようにやや弱々しく聴こえました。
この時点ではちょっと不安を覚えてしまいました。
おまけに隣の席では携帯が鳴るし……。
第2楽章に入るとヴァイオリンの音が伸びてきて艶やかによく響くようになりました。
テンポもかなり普通になり、タコ先生独特の複雑怪奇な伴奏音型とソリストとの掛け合いが見事です。
さまざまな形で顔を出すタコ先生音型が実に不気味。
お祭り騒ぎなのか黄泉の国へ引きずり込もうとしているのかタコ先生が怪しく誘いかけます。
ヴァイオリンが細かく刻む部分とゆったりと歌わせる部分の対比が実にすばらしかった。デモーニッシュ！です！
この曲は金管楽器がホルンとテューバだけというかなりの特殊事情もあって分厚い部分の音の響きがたまりません。
でも第3楽章ぐらいからは、まわりの雑音もしだいに薄れていき、もう思い煩うことなくただただ気持ちよく、ゆったりとした響きの中に身をゆだねて聴いておりました。
そして、静かな伴奏音の中から浮かび上がるようにタコ先生の象徴音型の変形をソリストが弾く部分、悪魔的なのか天使的なのかわからない優しげでこわく的なあの旋律。
泣き叫んでいるのか、むせび泣いているのか……。
心が「これでもか」とばかりに激しく揺さぶられます。
わたしは初めてこの曲を聴いたとき、この部分で魂の二分の一ぐらい持っていかれたのです。
しかし、今日は、バイバさんがそんなにねっとりと弾かなかったことと、まわりが五月蝿かったこともあり魂は身体にとどまったままでした。
「ああ、そろそろカデンツァだわ・・・」
と、うっとりとなっていると、近くで5時を告げる時計のアラームが・・・首絞めていいですか？
そしてカデンツァです。
超絶技巧の見せ場です。
ヴァイオリンの音色はあくまでも太くつややかで洗練されていました。
演奏そのものは、最初は何となくもたもたした、定まらない感があったものの、だんだん細かく刻みながら、特殊奏法もあいまって高揚していき、トゥッティで第4楽章に突入する15秒ぐらい前に
「きたきた〜」
って感じで、足元からぞわぞわぞわと鳥肌が立ってきて、腕に到達。
普通であれば、トゥッティの部分で全身鳥肌で幽体離脱なんですが、トゥッティが弱かった！！
どうしてあの音量なの？？？
そしてちょっと打楽器がばらけた感じ。。。
そしてバイバさんの音が弱まったのか、オーケストラの音が勝ってしまったのか、ところどころ音が埋もれてしまう部分も。。。ここにきて音のバランスがおかしなことに。。。
もっと激しく乱痴気騒ぎ気味の大音量でトゥッティになだれ込んで、その後はバイバさんを浮き上がらせるようにしてほしかった・・・とは思いますが、ホールのせいということもあるかもしれませんね。
いや、フィッシャーさんの指示なのでしょうか。
最後はやはりいやがうえにも盛り上ってしまい、泣きそうになりましたが、いつもの倍ぐらいマスカラをつけて出かけたので、それが抑止力となって大丈夫でした。
この曲でもやはり沈着冷静だったフィッシャーさん、かなり濃い目の演奏ではありましたが、抑制を効かせた音作りだったと思います。
バイバさんの身もだえ感も、やり過ぎることなくちょうどいい感じでした。
もう少し、ねっとりというか骨太がわたしは好みなのですが……♪
バイバ・スクリデさん。すごく期待できそうですね。
パンフレットを見たら、妹のラウマ・スクリデさんとデュオ活動をされていて、そこにチェリストのあの、ソル・ガベッタさん、数年前タコ先生のチェロ・コンチェルトを聴かせてくださったうえに、アンコールのヴァスクスが強烈だったあのソル・ガベッタさんが加わって三重奏の活動も行っているとか。
これはぜひ聴きたいですね！
さて、べトベンの第5番。
硬くて軽快な『運命』でした。
そして今まで聴いたこともないような不思議な『運命』！
これはひとえにフィッシャーさんの新解釈に基づくのだと思いますが、聴きなれたものを想像して、というか期待して聴きにいらした人はびっくりされたのではないでしょうか。
出だしから「おっ♪」って感じでしたもん。
フィッシャーさんからはもっと軽快なさらりとしたテンポでやりたいという感触が伝わってきましたが、オケがちょっとついていけなかったのかな。
もたもた、もごもご、困惑といった表情が見え聴こえました。
今回は前回と違って相思相愛とはいかなかったみたい。
でもてきぱきしたフィッシャーさんの指揮は気持いいですね！
ちなみに演奏会終了後にバイバ・スクリデさんのサイン会がありましたが、なんだかんだで疲れ果ててしまったのでそのまま帰りました。
会場が静かだったら・・・芸術劇場コンサートホールだったら・・・などとついつい考えてしまいますねぇ。。。あああ。。。
「オーケストラの森」と「ロマノフ王朝の悲劇」はあらためてゆっくりと見ることといたします。
あ、5時に鳴ったアラーム時計ですが、6時にもきっちりと鳴りましたよ。。。
困ったものだねぇ。byタコ先生
