アレグロ・エネルジコ　マ・ノン・トロッポ

大好きなショスタコーヴィチ先生やマーラー監督の音楽をめぐっての考察（妄想とも言います）や、
出かけたコンサートの感想などを中心にして好きなものごとについて綴っております。

April 2011

花粉の飛散する量も少し減ってきたかしらと思う今日この頃。
でも、気温の変化が厳しいですね。
体調管理にはお気をつけくださいませ。

さて、1日早いのですが、
5月に出かける予定＆気になる演奏会をピックアップしてみます

出かける＆気になる演奏会が中旬以降に集中しているので
聴くために要するエネルギーの配分が難しいかも。。。

決定しているものは以下の３公演です☆
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まずは、5月21日（土）の名フィル定期演奏会。
この演奏会に先駆けて20日に行われるゲネプロ見学会にも参加します
「愛と死」シリーズの2回目「知ることと愛すること」と題されたプログラム。
ヴァーグナーの『ローエングリン』の第1幕と第3幕の前奏曲、
シェーンベルクの『浄められた夜』
シューマンの交響曲第2番
どの曲も楽しみです。しっかり予習せねばですね。
GPはシューマンがメインなのかしら

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次は、5月25日（水）のアトリウム弦楽四重奏団の演奏会。
この演奏会では、ピアノの北村朋幹さんが共演されます。
北村さんは名フィルの定期でも聴いているし、アマチュア・アンサンブルとの演奏会でも聴いている、
これからの活躍をとても期待しているピアニストの一人です。
お目当てはもちろん
ショスタコーヴィチ先生のピアノ五重奏曲
です。
バルトークの弦楽四重奏曲第3番もいいな☆
アトリウムSQの方からは、来日には躊躇いはないという頼もしい言葉をいただいています。
ああっ、楽しみだ

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5月の〆は30日（月）のクヮトロ・ピアチェーリの演奏会。
お目当ては、こちらももちろん
ショスタコーヴィチ先生の弦楽四重奏曲第11番
なのですが、フィリップ・グラスの弦楽四重奏曲第5番や、
新曲（クヮトロ・ピアチェーリ委嘱作品）の世界初演もプログラムに含まれていて、大いに期待しています。


そして、出かけようかどうしようか悩んでいる演奏会が二つあります。
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28日（土）の、遠藤真理さんのチェロ・リサイタル。
ピアノが三浦友理枝さんというのも素敵。
このお二人は、特に遠藤真理さんは大好きなので、何とか出かけたいと思っています。
プログラムも、リゲティの無伴奏チェロ・ソナタ、黛敏郎の無伴奏チェロのための「文楽」、ヴェーベルンのチェロとピアノのための2つの小品などという、何とも渋くて心憎い選曲。
前向きに考えています。

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19日（木）に行われる、このアントワン・タメスティの無伴奏ヴィオラ・リサイタルも気になります。
バッハの無伴奏チェロ組曲の第１番や第3番のヴィオラ版ってどんな感じなのかしら、とっても気になります。
（あと、何だかかっこいいし）

カッコいいと言えば、6月のフランチェスコ・トリスターノが素敵で、
今からゾクゾクしています。バッハとケージというプログラムにもドキドキ。（この人です）
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名古屋マーラー音楽祭の演奏会もありますが、これを入れるとスケジュールがあまりにもタイトになってしまうので、ちょっと無理かな・・・。
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交響曲4番と「子供の不思議な角笛」よりなので、
聴きたくはあるのですが

・・・・・・・

ところで、前の記事でクローン病が云々って書いたのですが、特に再燃しているとかそういうことはなさそうです。
なさそうなんですが、退院以来ずっと検査していないので、
近々入院して、小腸の内視鏡検査でもしましょう
という話になりました
時間があるときにという話だったので、MET以降、ジャル様以前にしようかなと思ったんですが、その間にもいろいろと演奏会があるので、8月ぐらいに入院しようと勝手に思っています。

やっぱりジンクスは破れないのでしょうかっ

待てよ。。。
入院するだけならば、ジンクスとは関係ない
別に悪化しての入院じゃないし、予定していた演奏会に行けなかったり、チケットを無駄にしなければ大丈夫なんだ。
うん、だから大丈夫
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#アントワン・タメスティ
#遠藤真理

ふと気がつけば、今日は4月26日。
今日って何かあったような・・・・・・と思ってみたら
ブログのお誕生日でした

紆余曲折を経て4年目に突入しました。
何だかんだ言いつつも、ここまで続けていられるのは、いつも暖かく見守ってくださる方々のお陰と感謝しています
ひとつの節目を迎えたこともありますし、ショスタコーヴィチ先生やマーラー監督のこと、演奏会の感想文だけではなく、始めた頃のようにいろいろなことについても書いていこうかなぁと思っています。

静かな泉がわくように、
ひそかな泉がわくように、
ゆたかな泉がわくように
（W中学校の校歌より）

でも、長く続けられるよう、決して無理することなく

【ゆ】　ゆめのごと
【た】　楽しき日々が
【か】　重なりて
【な】　なほ永らへよ
【泉】　泉のごとくに

これからも、どうぞよろしくお願いいたします。




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名古屋マーラー音楽祭　第1部演奏会（4月公演）
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・グリーグ：過ぎにし春
・マーラー：交響曲第3番

アルト：三輪陽子
女性合唱：モーツァルト200合唱団
児童合唱：名古屋少年少女合唱団

指揮：黒岩英臣

2011年4月24日（日）16：00〜
愛知県芸術劇場コンサートホール


なかなか聴く機会の少ないマーラーの交響曲第3番の演奏会。
突然行きたくなったものの、チケットは早々に完売・・・と思っていたら、行けることになりました

でも、実はこのところ体調があまり思わしくなく、「ジンクスはやはり破ることはできないのか」と、気持ちも落ち気味でした。
特にこの数日はクローン病であることを自覚するような症状が出ていてトホホな状態
聴きに行けば気持ちや身体も晴れ晴れとするかもしれないと、
ここはひとつ賭けに出てブル・ファンドの気分で出かけました。
ハイ・リターンでございました

マーラーの交響曲第3番と言えば、小林研一郎先生指揮/名フィルで2002年10月2日に聴いたとき以来です。
ミロスラフ・ケイマルさんをポストホルンに迎えてのこのときの演奏会の雰囲気は尋常なものではなく、演奏が終って小林先生が静かな厳かな口調で
「マーラーがこの場に下りてきました」
とおっしゃって、その場にいた多くの人が同じ思いを抱いたのではないかと思えるような演奏会でした。

10年近い時を経て、愛知県芸術劇場コンサートホールで再び聴くマーラーの交響曲第3番

なかなか趣きのあるものでした。
マーラーの前には、東日本大震災の被災者の方々へ思いを馳せてということで、グリーグの「過ぎにし春」が演奏されました。
演奏者入場の際と曲が終ってからの拍手はなしという演奏でした。
でも、マーラーが交響曲第3番のモットーとしたものは、
「主よ、私のこの傷を見よ！
他のものには、それを負わせたもうなかれ！」
というもの。
そのことや、この曲は、最終的に「すべてが平安と静寂のうちに、『愛』の中で救済にあふれた解決を見出す」ものだということを考えると、マーラーだけでもよかったんじゃなかったのかな・・・・・・とちょっぴり思いました。

そして、いよいよマーラーの交響曲第3番。
何しろ大きな曲なので、演奏する側にとっても聴く側にとってもたいへんな集中力を要します。
2002年の演奏会のときには、聴き終わって、もう、立ち上がれないほど体力を消耗しました。
でも、昨日の演奏会は心地よい疲労感とともに、終楽章のアダージョで安息の地に運ばれた（は、運ばれちゃダメだ）ような気がしました。
どこがどうなっているかわからないほど複雑で、巨大な曲を、飽きさせることなく、中だるみするでもなくきちんと聴かせてくださった名古屋ムジークフェライン管弦楽団の皆さまの集中力は素晴らしかったと思います
黒岩さんとの息も合っていて、かなりの迫力でした。
終楽章の入りが非常にゆったりしていて「おおっ」と思ったのですが、あのテンポは最後の大団円に向けての布石であったのだろうと終ってみて思いました。
最初からトロンボーンが見事だったし、ポストホルンの方も大健闘だったと思います。
名古屋ムジークフェライン管弦楽団の皆さんは、きっと長い時間をかけて丁寧に練習をされたに違いありません。
最後のアダージョ楽章が終ったときの皆さんのお顔が満足感と喜びに溢れていました。

でも、聴けば聴くほど、マーラーの音楽って不思議なものだと思います。
音楽というよりも、マーラーの頭の中というか思想というか、特にこの3番の第2楽章から第5楽章までって、はっきり言ってよくわからない・・・
表現しようとしているものが途方もなく大きすぎて、聴いているうちに途方にくれてしまうのです。
マーラーに言わせれば、「森羅万象の進化の過程すべてを、一歩一歩上がっていく音楽的な詩ということもできるのだろう。生命のない物質から始まり、最終的には神の愛に行き着くんだよ！」ということになるのですが、やっぱり途中が難しい。。。

8番の第�局瑤汎瑛佑法△泙世泙席拔�不足であると痛感させられる曲です


名古屋マーラー音楽祭はこれからも続きます。
今後の私的予定としては7番と10番は角田鋼亮さんが指揮されるので出かけるのは決定しています。
できれば6番も聴きたいと思っています。

レミケードまであと3日、何とかこのまま何事もなく過ぎますように。。。

（数日前からブログの編集画面が変わって、色をつけたり、かわいい絵文字が使えたりするようになったみたいで、今回色々とやってみました。今ひとつ不安定なのが困るのですが……）


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#名古屋マーラー音楽祭
#名古屋ムジークフェライン管弦楽団
#黒岩英臣
#マーラー
#愛がわたしに語ること

名古屋フィルハーモニー交響楽団第379回定期演奏会
「愛と死」シリーズ　《永遠の愛を求めて》
EPSON011R・シュトラウス：
交響詩「ドン・ファン」
リスト：死の舞踏*
〈ソリストアンコール〉
メトネル：「忘れられた調べ」第1集より　第7曲「思い出の森の舞曲」
（休憩）
プロコフィエフ：
バレエ音楽「ロメオとジュリエット」より
・メヌエット（第1組曲：第4曲）
・仮面（第1組曲：第5曲）
・ロメオとジュリエット（第1組曲：第6曲）
・タイボルトの死（第1組曲：第7曲）
・モンタギュー家とキャピュレット家（第2組曲：第1曲）
・少女ジュリエット（第2組曲：第1曲）
・踊り（第2組曲：第4曲）
・朝の踊り（第3組曲：第2曲）
・ジュリエットの墓の前のロメオ（第2組曲：第7曲）
・ジュリエットの死（第3組曲：第6曲）

指揮：ドリアン・ウィルソン
*ピアノ：ヴィディム・ホロデンコ

2011年4月16日（土）16:00〜
愛知県芸術劇場コンサートホール


やっほ〜！定期会員だ〜
と意気揚々と出かけたことはいいのですが、わたしってやはり学習能力のない人間でした。
学習能力がないという自覚はあるのですが、それが一向に改まらないというのは問題だ。むむむ。
3時48分ぐらいにコンサートホールの入り口に着いたら、中から「アヴェ・マリア」の旋律が・・・・・・
え、一昨日の空耳？「ガルフ・ストリーム」？？？

そうではなくて、昨日もロビー･コンサートが行われていました。
d1115248.jpg3時15分から4組が演奏していらっしゃったみたいです。
3時15分と言ったら、家を出た時間ではないですか。
先月末の演奏会でのロビー･コンサートはコバケン･スペシャルだったからなんだと思い込んでいて、でも、今回は年度初めの演奏会。
何かが行われるかも…と思ってサイトをチェックして出かけるべきでした。残念。。。
次に活かそう（次はなかったりして）
おまけに焦って写真撮ったら焦点合ってないし･･･あうう


というわけで、定期会員になって初めての演奏会。
プログラムにも名前載ってました！
4月7日に申し込んだのにもう名前が載っているなんて！
プログラムって直前に印刷されることがわかりました。
でも、定期会員になるに際してはジンクスとは別に気になることがありました。
シーズン通して同じ席で聴くということは、ひょっとすると両側に座る方々も定期会員の可能性があり、どんな人だろう……がさがささせる人だったらどうしよう（普段はかなり温厚なんですが、演奏会でごそごそする人には注意してしまうタイプなので、もし、最初で何か諍いがあるとシーズン中引きずっちゃうじゃないですか、だから、そのあたりが…ね）、怖い人（って私の方が怖いよ、きっと）だったらどうしよう……と思っていたのです。
でも、両側ともわたしより少し年上のお姉さまという感じで、女性一人で聴きにいらっしゃるということは、きっと良い方々に違いないわとちょっと安心。

今シーズンの名フィルは常任指揮者が不在という体制なので、どんな感じなのかしらと思いながら臨んだ演奏会でした。
が、不安な部分がちらほらと散見されるものとなってしまいました。

最初の、リヒャルト・シュトラウスの『ドン・ファン』はとても元気よく溌剌とした始まり方で気持ちよく、その後もきれいにまとまっていて、華やかに今シーズンの幕が開いたと思いました。

続くリストの『死の舞踏』は、何と言ってもヴァディム・ホロデンコさんがよかったです（見映えもよかったです）
冒頭の荘重な〈dies irae〉の入りは重々しいけれどとても歯切れがよく、その後に続く超絶的な部分でも音がひとつひとつキラキラと美しく立ち上がっていました。
そして危うさを全く感じさせない堂々とした演奏。
いつも一体どうやったらあのように弾けるのかと思うグリッサンド連発の部分もメリハリがあって「おおう！」と一人席で喜んでおりました。
華奢な身体のどこにあれほどのエネルギーがあるのだろうというくらいの激しく熱い演奏に大満足。
煌びやかという表現が一番ぴったりくるような演奏でした。
そして、ステージでのお辞儀が演奏とうってかわって初々しくぎこちなく、ギャップ萌えしました。
一昨日のクレーメルさんやアファナシエフさんが、「あ、どうも」という感じで、そっけないほど堂々としていらっしゃったので、余計に愛らしかったです。
しかし、『死の舞踏』を聴くたびに、もともとは非常に厳かなグレゴリオ聖歌である--dies irae, dies illa--を、ここまで激しく、圧倒的な迫力のある曲にしちゃっていいのかなぁ。。。と少しだけ思います。

そして『死の舞踏』とアンコール曲の対比が、非常に効果的であったと思います。
激しく力を前面に出す曲だけじゃなくて、こんなにも美しく繊細な曲もしっかりと弾けますよ……という強烈なアピールになったような気がしました。。。
これからも注目していきたい一人になりました☆
それにしても、メトネルっていいなぁ。
「忘れられた調べ」は全曲聴いてみたいです。

で、問題はプロコフィエフの『ロメオとジュリエット』でした。

何と言うか、メヌエットが始まったときからすでに「えっ？」と思ったんですが、残念ながらそれは最後まで続くことに……。
最初は管楽器のセクションがくぐもって感じられ、そのあとは、全体的に、こう、ズレがあり、音がずれて聴こえるのは席（端っこと言えば端っこの席なので）のせいなのかしら……とも思いましたが、明らかに違う音が出ていたりしたので、やはりアンサンブルがやや乱れていたのだと思います。
十分に音合わせができなかったのかしら……という気持ちが最後まで拭えませんでした。
この時に聴いた『ロメオとジュリエット』の方が、構成も含めて全体的によかったかなぁ……などと思ったりして
とはいえ、大好きな曲であるし、中でも大好きな「タイボルトの死」「モンタギュー家とキャピュレット家」「ジュリエットの死」は比較的まとまっていたので、楽しめました。

ホワイエで名フィルの3種類のクリアファイルがセットになったものが売っていたので、思わず買ってしまいました。。。
（あ、下の画像はクリアファイルではなく、当日配布のプログラムです）

EPSON012何はともあれ、名フィルの今シーズンの幕は上がりました。
「愛と死」シリーズ。
不安材料がないと言ったら、ちょっぴり嘘になりますが、名フィルには期待していきたいと思います。
来月はどんな演奏が聴けるのでしょう。
楽しみです

一年間、どうぞ宜しくお願いいたします



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#死の舞踏
#ロメオとジュリエット

ギドン・クレーメル・トリオ・コンサート
EPSON010・シュニトケ：
ショスタコーヴィチ追悼の前奏曲（Vn）
・バッハ：シャコンヌ（無伴奏パルティータ第２番）（Vn)
・ブラームス：
ヴァイオリン・ソナタ第３番（Vn,Pf）
【休憩２０分】
・ヴィクトリア・ポリェーヴァ：
ガルフ・ストリーム【日本初演】（Vn,Vc）
・ショスタコーヴィチ：
ピアノ三重奏曲第２番（Vn,Vc,Pf）

【アンコール】
・アルヴォ・ペルト：半音階
・シューマン：ペダルピアノのための６つの練習曲作品５６より第３番

ギドン・クレーメル（ヴァイオリン）
ギードレ・ディルヴァナウスカイテ（チェロ）
ヴァレリー・アファナシエフ（ピアノ）

2011年4月15日（金）19：00〜
三井住友海上しらかわホール



もともと出かける予定ではなかったコンサート。
出演者やプログラムが変わり、その変更後のプログラムにショスタコーヴィチ先生のピアノ三重奏曲第2番が入っていたので急遽出かけることにしました。
当初予定されていたピアニストのカティア・ブニアティシヴィリさんは自国政府の日本への渡航自粛勧告などもあり来日を取りやめ、その代わりに来日されたのは、もともとクレーメルさんと親交があり、去年20数年ぶりにデュオを再開したヴァレリー・アファナシエフさんでした。
ピアニストとしてだけではなく、詩人でもあり作家でもあり、自作の詩や台本によって朗読や芝居も交えながら演奏するパフォーマンスでリサイタルを行うこともしていらっしゃるそうです。

この演奏者の変更がどれぐらいスゴイことなのか最初はピンと来なかった残念なわたしですが、「海老蔵さんの代役を仁左衛門さんが務めたことよりもはるかにスゴイ」という話を聞いて「へぇ〜〜〜」っとなりました。

で、最初に結論を言ってしまえば、出かけて本当によかった！のひと言に尽きます。
あまりにも気が早いのですが、今年度最初に出かけた演奏会が、今年度出かけた演奏会第1位になりそうな予感がします。
ＭＥＴ（来日についてはちょっと悲観的）やジャルさまも聴くし、高関さんのブルックナーもあるし、尾高さんのマーラーもあるから軽々しく発言するのも何なんですが、でも、ちょっとそんな気がします。

今回はとにかく急に出かけることになり、チケット代金も決して安くはないので、一番安いステージの左側ほぼ真横の2階バルコニー席にしました。
でも、これがまた幸いしたというか、とにかく演奏者に近い！そしてアファナシエフさんの手元やクレーメルさんのボウイングや楽器の構え方（だって、ほら、つい最近ヴァイオリン始めたじゃない、わたし。あ、肩当て買わなきゃ）、チェロは正面なのでフラジオレットのかけ方などが非常によく見えて、とても勉強にもなりました。

前半の最初２曲はクレーメルさんの独奏です。
白いスモッグ風のシャツに黒いシンプルなパンツを合わせたクレーメルさんが、颯爽と……という感じではなく、お店かどこかから出てくるような感じでとても普通に自然に登場。
ああ、生のクレーメルさんだ！

シュニトケ：ショスタコーヴィチ追悼の前奏曲
で、特に間を置くでもなく、演奏を始めました。
文字通りショスタコーヴィチ先生の逝去に際して書かれた曲です。
ピツィカートでタコ先生音型が刻まれ、何となく不安な雰囲気をかもしだしたかと思うと次にはバッハを思わせるようなフレーズが後を受け継ぎ、少し安心すると、またタコ先生音型が現れて、でも、最後はまたバッハ風に締めくくられるという不思議な曲でした。
難しかったです。何とも形容しがたく感想になっていなくて、すみません。
クレーメルさんのヴァイオリンは完全無欠でありながら、弾き方がとても自然体。
どこにも無理な力が加わっていないような余裕感がいっぱいでした。

バッハ：シャコンヌ（無伴奏パルティータ第２番）
２番目のお目当て曲でした。
あまりにも有名なバッハの超絶技巧曲。
口、ぽかん……でした。
もう、最初のフレーズから、自分がどこにいるのかわからないぐらいにクレーメルさんの世界に引きずり込まれました。
分厚く重なる豊かな音。一つのヴァイオリンという楽器から、これほど多彩な音が聴こえてきてもいいのか……と思うほどの凄い演奏でした。
でも、気負いのようなものは全く感じられず、そこにあるのは完璧な安定感と安心感。
すごいなぁ、クレーメルさん。
つくづくそう思いました。
それにしても何度聴いても素晴らしい曲ですね！

ブラームス：ヴァイオリン・ソナタ第３番
この曲でアファナシエフさんが合流です。
何と言うか、加藤周一先生を彷彿とさせるような威厳というか畏怖さえ感じさせる風貌でした。
全身黒ずくめで、ヨージ・ヤマモトのデザインのような黒い長めのジャケットをお召しになって、これまたごく自然に登場。
おもむろにピアノの前に座り、手を鍵盤の上に……その手が大きい！
指が長い！
最初の部分にも書きましたが、ほぼステージ真横の2階バルコニー席の一列目だったので、手の様子がとってもよく見えたのです。
大きな手を鍵盤に乗せて弾きはじめて、その指の動きに目が釘付けになりました。
動かないときの手は、普通に人の手なんですが、いったん動き始めると、それは人の手というよりも、大型節足動物が鍵盤の上を這いずり回るというか、指先でころころと音を出すというものではなく、指を伸ばしたまま指の平たい部分で弾いているんですが、その音と言ったら！！
あの動かし方で、どうしてあんな色彩溢れる音が出せるのでしょう。
軽やかな部分はあくまでも軽やかに、重い部分は、これ以上ないくらい深みのある音。。。
そして、ときどき跳躍する腕。
何か、一種のパフォーマンスを見ているようでした。
もちろんクレーメルさんとの息はぴったりで、
「凄いもの聴いちゃった」
というのが正直なところ。

20分の休憩中は、横にいた夫とひたすら「凄いね」を繰り返していました。

ヴィクトリア・ポリェーヴァ：ガルフ・ストリーム（日本初演）
「バッハ、シューベルト、グノーの主題によるヴァイオリンとチェロのための二重奏曲」という副題（？）が付いているこの曲は、クレーメルさんとチェリストのギードレ・ディルヴァナウスカイテさんのために書かれた2010年の新作だそうで、スコアなどの資料がない日本初演の曲と曲目解説にありました。
「ふうん、わりと聴きやすい現代音楽という感じなのかしら」
と思いながら、聴き始めてびっくり。
何と、チェロがバッハの無伴奏チェロ組曲第1番のプレリュード旋律を奏で、ヴァイオリンが同時にシューベルトの「アヴェ・マリア」の旋律をそこに重ねます。チェロ旋律は部分的にヴァイオリンに合わせたように変形されていましたが、シューベルト部分はほぼそのまま。
「おお〜！！」
と思って聴いていたら、今度はパートが逆転。
ヴァイオリンがバッハの無伴奏の旋律を弾くと、それにチェロがフラジョレットで「アヴェ・マリア」を重ねます。
で、また逆転して今度はグノーの「アヴェ・マリア」になって……。
ということで曲は幕を閉じました。
こんなのアリなのかっ！！と思いましたが、この3つの主題って全く違和感なく重なるんだーと、驚きましたが、考えてみるとグノーの「アヴェ・マリア」ってバッハの平均律クラヴィア曲集第1巻第1曲にグノーが主旋律をつけたものだし、平均律の第1曲はずっとアルペジオを刻むのでバッハ無伴奏チェロ組曲のプレリュードとはあうのかもしれない……と妙に納得した曲でもありました。
楽しかったです。
ちなみにタイトルの「ガルフ・ストリーム」はメキシコ湾流のことだそうですが、どうしてこのタイトルなのかは判りませんでした……。
シンプルな黒のドレスを身に纏ったチェロのギードレさんは、朗々とという弾き方ではなく、やや硬めで淡々としっかり弾くというタイプの方でした。
さあ、いよいよ次はショスタコーヴィチ先生のピアノ三重奏曲第2番です！

ショスタコーヴィチ：ピアノ三重奏曲第2番
この曲は、プロ、アマチュアを問わず、実演で何度か聴いているのですが、どうしても不全感が残ってしまう印象でしたが、今回は違いました！
やはり、ソリスト級の人たちが3人そろって初めて、この曲の「真髄」に触れることができるのだ！と思いました（偉そうな書き方ですみません）。
特にピアノとチェロ！
チェロの最初のフラジョレット奏法の部分、ものすごく緊張するに違いないこの悲痛なメロディの部分が、非常に淡々と始まり、これで何か聴き手（つまり、わたしのことなんですが）の緊張感が取れ安心してタコ先生の音楽に身を委ねようと思いました。
わたし、この3人好きです。
どんな曲でも、変幻自在に弾いてしまうクレーメルさんと、舞踏のようなものを感じさせるアファナシエフさん、そしてその二人の橋渡しのような存在にも思える実直な弾き方のギードレさん。
この硬質で堅実で、音楽の表情を大胆に表に出さないようなギードレさんであったからこそ、どろどろしすぎない、非常にスタイリッシュであり、かつ、迫力のあるショスタコーヴィチ先生のピアノ三重奏曲第2番を聴くことができたのだと思います。
チェロがやや抑制しているからこそ、悲劇性をより高めるような乱痴気騒ぎのような第２楽章が生きたのだと思うし、第4楽章のタコ先生踊りの部分も、それぞれの音が喧嘩直前の鬩ぎ合いの緊張感を保ったまま進行していったのだと思います。
低音部がややべったりとしたアファナシエフさんのピアノは第3楽章も冒頭の弔鐘のような和音の連続が独特でした。そして続くパッサカリアで、こうぐぐっと心の奥をえぐられました。
感情的になりすぎないクレーメルさんのヴァイオリン。
そして、硬いチェロの音。朗々とした響きだと、何かこう、もっと全体的に艶かしいもの（も好きなんですが）になったような気がします。
艶かしいのではなく、なまなましくてそれでいて冷静な演奏。
沈鬱さを内側に抑制することによって、この曲の持つ形容しがたい雰囲気を存分に表現していたと思いました。
終わり近くの、カデンツァ風のピアノの上に突如としてヴァイオリンが第1楽章の主題を奏で、そこにチェロも加わって、大きな一つの音楽になっていくあの部分は本当に痺れました。

ああ、素晴らしいショスタコーヴィチでした。

最後の音が完全に消えるまで誰一人、フライング拍手をする人もなく、本当に素敵な凝縮した時間でした。

ここで終わりでも大満足なのに、3人そろってステージに登場。
クレーメルさんが
「・・・の・・・です」とご自身でアンコール曲を紹介されたのですが、聞き取れず、曲は……む、むつかしくて、わからない。
帰りにロビーでアルヴォ・ペルトの「半音階」であることが判明しました。
いずれにしても初めて聴く曲でした。

このまま終ったらどうしようと思っていたら最後に華やかで楽しい気持ちになるようなシューマンを持ってきてくださるあたり、憎いですねぇ。。。


今年度最初の演奏会がこんなに素晴らしいものであったことにありがとう。
クレーメルさん、アファナシエフさん、ギードレさん、来日してくださって本当にありがとうございました☆


・・・・・・

演奏会が終ってホワイエではサイン会が行われるみたいでしたが、長蛇の列ができていたし時間も時間だったので会場を後にしたのですが、「来日ありがとうございます」は自分の口から伝えたかったな・・・と今日になってやや後悔している自分なのでした。

アファナシエフさんは、訳者の方が『日本に捧ぐ』とタイトルをつけた詩を、クレーメルさんは次のような言葉を含む長い文章をわたしたちに宛ててプログラムに書いてくださっています。

「……音楽は計り知れないエネルギーの源です。その力は世紀を超えて及びます。バッハ、ショスタコーヴィチ、ブラームスといった偉大な作曲家について考える時、私たちは永遠の価値とつながり、極度の混乱状態の中でも私たちを生存へとつないでくれる何か、私たちはこの世で一人ではなく、ハーモニー（調和）は今もこの世界に存在していたと教えてくれる何かにたどり着くことができます。

バッハを聴けば、私たちは決して一人ではなく、いつも話しかけられる誰かがいます。ショスタコーヴィチと歩めば、苦難は高い精神性と内なる強さで克服できるとわかります……」（プログラムより引用）

・・・・・・

（以下、蛇足です）

帰ろうとしたときのホワイエでの出来事。
「あれ、ひょっとして真理ちゃんかい？」
という声が。
振り向くと声の主は最初の主治医の先生でした。
クローン病に罹患してから10年ほど前までお世話になっていた先生で、13年しか一緒に過ごすことができなかった父よりも長い間お世話になっている先生で、しかも、父が「がんセンター」で最後にお世話になったという不思議なめぐり合いを感じさせる先生です。
なので、お父さんに逢ったみたいで嬉しかったです。
優しい目をした素敵な紳士のＤ先生。
「真理ちゃん、元気そうだし、スタイルがよくなったんじゃないか？
素敵だよ」
などと言われ、さらに嬉しくなったことを付け加えて感想文を終わりにします。

・・・・・・（4月17日追記）・・・・・・

EPSON013

すっかり魅了されてしまったアファナシエフさんですが、11月にピアノ・リサイタルがあるみたいです。
是非とも出かけたいと思います。
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#ショスタコーヴィチ

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