アレグロ・エネルジコ マ・ノン・トロッポ

大好きなショスタコーヴィチ先生やマーラー監督の音楽をめぐっての考察(妄想とも言います)や、
出かけたコンサートの感想などを中心にして好きなものごとについて綴っております。

カテゴリ: メシアン

今日12月10日は、今年生誕100年を迎えている
オリヴィエ・メシアン先生(1908-1992)の誕生日です。
つまり、
ベル正真正銘、本日が生誕100周年記念日ですベル

音譜だから、今日はメシアン先生を聴きましょう音譜

って、なんか白々しくてごめんなさい。。

そう言えば、本当はこのブログ「メシアン・ブログ」になる予定だったんですよね。
あれは7月17日のこと、メシアン門の前にたたずんでいたわたし。。。
でもって、翌日に門を叩いたら入れてもらえそうだったから
足を一歩進めたんです……
そうしたら……
そこに……

壺があったんですっ!

壺が埋めてあって、
それに落っこちちゃった〜。。。
いまや深遠なタコ壺に囚われの身。。。
タコ壺を終の棲家と決めた住人でございます。


人生何が起こるかわかりませんね、メシアン先生。。。
ごめんなさい。

でも今日は『世の終わりのための四重奏曲』を聴くことにします。

数日前に届いた箱たちです64e1bd27.jpg
左がメシアン箱。
右がタコ先生ボックス。

合わせたエルメスは、1989年限定品の、「『フランス(メシアン)』『革命(タコ先生)』」記念のものです。
あ、なんかすごくくだらないですね。

すみません。


9cb2526a.jpgそれでもって、今朝教育パパが仕事に出かける前に
「はい、これ」
と言って一枚のSDカードを。
「何なの〜」
と聞くと
「聴けばわかる」
と不敵な笑いを浮かべ暑い中、日傘を差して出かけていきました。
ささっと家事を済ませて、カードをチェックしてみたら……。
タコ先生ボックスが入っていました!!
CD27枚分ですよ〜。

きゃあ。

これはもう、コンプリートするしかないですねっ!


さっそく1曲目、交響曲第1番を聴いてみました。
タコ先生がお若いころ(19歳?)に書かれた曲。
第1楽章は行進曲風、次々と表情が変わってお茶目な感じです。
第2楽章の無窮動的な響きはかなり好みです。突然のピアノの和音も新鮮だし、打楽器の音がいかにもタコ先生らしくて耳に心地よいです。
ゆったりした第3楽章を経て、対照的な雰囲気の第4楽章へ。
ここのティンパニはいいですね! 調性が定まらないまま終るのですが、不安でも不快でもないのです。
全体としてとても軽快でありながらも端正なたたずを持ち、若々しい情感に溢れた、とても魅力的な曲でした。

この曲ならば、31日にベトベンの5番のかわりにやるのにちょうどいいのになぁと思いました。
バランスのとれたとってもお洒落(?!)なプログラムになると思うんですけど。
ドビュッシー、タコ先生と続いて、締めがベトベンの5番というのは、なんかちょっと違うんじゃないのかしら。。。

でもタコ先生の音って本当に魅惑的だわ。
構えることなく、心と体にすっと沁みてくる。
不協和の音も、無調というか、不安定な調性も、まったく神経に障りません。
障るどころか、文句なしに気持いいのです。
これはひょっとして、マーラーをさんざん聴いてきたことにも起因するのでしょうか。似ている音の連なりが時々聴こえてくるような……。はて。

掃除をしたら続きを聴くことにいたしましょう。
コンプリート、コンプリート♪

あ、でも、心配しないでくださいね。
ここでなにも全作品の感想を展開しようというわけではありませんので……

チラシ 004名古屋は今日も暑うございました。
最高気温37.7℃……天気予報ではこのところ毎日「今年になって一番の暑さでした」と言っていますねぇ。

そんな中「第27回 名古屋レコード・CD祭り」に行ってきました。

いつもは中途半端な時間に出かけるのですが、今回は開店前に出かけようということになりました。
どんな様子かわからないので、ワクワク!
f3d3927f.jpgたて看板がありますよ!
歩道にはのぼりも立っていました!
開場の15分くらい前に栄に着いたのですが、目指すところは同じだとわかる人が、会場となっている「明治安田生命名古屋ビル」の入り口にどんどん吸い込まれていきます。
おお〜、
16Fのホール前には長蛇の列ができ、入り口には「荷物預かり所」が。
並んでいる人たちの目がぎらぎらと光っていて恐い。
きょろきょろ……
え〜っ! 女がわたししかいない!!
何か妙にドキドキして緊張してしまいました。


時間になって、ドアが開けられると、お目当ての品を求めて並んでいた人たちが走り出します。

が、しかし、なのです。

チラシに
★クラシックの特設コーナー あり。
とあったように、あまり数はありませんでした。
ひとつの壁面(会場入って右奥)に沿って一列あっただけ。

でも、一枚だけかなりスゴイのではないかと思われるものを見つけました。
タコ先生の「交響曲第13番」の世界初録音の初版LPです。

1時間くらいウロウロして外に出たら暑かった。
不全感が残ったので、BANANAレコード本店へ行きましたが、ここもあまり出物はなく、HMVに寄って、おそらく最高気温に達していた頃に帰りました。

本日のお買い上げ(「CHOPIN・メシアン特集」はHMVで購入)
drawing












2a8729bf.jpg

夫も仕事で忙しいし……ってことで、独学でメシアンの勉強を始めようと思っていたら夫が
「書庫にメシアンの本があるはずだ」
と出がけに言うので(許可を得て)書庫をあさっていたら、見つけました!

amazonで調べたら絶版で入手不可だった音楽之友社刊の不滅の大作曲家シリーズ『メシアン』!!
メシアン 001
訳者のひとりである矢内原伊作先生という人は、夫の師中村真一郎先生のご友人だそうです。
発行が昭和48年。
その初版を持っているということは、ずいぶん前から夫はメシアン好きだったのかな? 
だからわたしが
「メシアン聴きたい」
と言い始めてからの協力体制がすごい。
ものすごく聴かせたがっているのがよくわかります。
まるで辛抱強い親が、子供が自発的に
「勉強する」
と言い出すのを待っていたみたい。

そしてタイミングよく本日届いた本。メシアン 002
Robert Delaunayの「リズム」というイラストが象徴的な
『The life of Messiaen』。

上の写真の音楽之友社刊の『メシアン』は、原書が書かれたのが1965年。
著者はメシアンの生徒のひとりだったピエレット・マリ。
1965年ということはメシアンは57歳。
『我らが主イエス・キリストの変容』『峡谷から星たちへ』『彼方の閃光』などが作曲される前のことです。
1965年以降、メシアンの作品は規模がますます大きくなり、題材も再びカトリック信仰に根ざしたものが多くなったと言われているわけですが、そのあたりのことについては言及されてはいないということになります。

こちらの『The life of Messiaen』は2007年に出版されているので、生涯にわたる部分が網羅されているのではないかと思います。

この2冊の評伝で、メシアンの作曲法とか人となりとか、作品が生まれた背景などを一通り勉強しようと思うのです。
もちろん音楽そのものもしっかりと聴きますよ。

「なぜそんなまどろっこしいことをするのか」
「音楽は聴いて感動すればいいではないか」
という意見があり、クラシック音楽の入門書的な本には
「聴けばよい」
「感じればよい」
と書いてあるものが多いようです。
でもわたしはちょっと違うのではないかなと思う。
クラシック音楽の横を通り過ぎるぐらいの距離感を最初から求めているのであれば、それはそれでいいんでしょうが……。
クラシック音楽と連れ立って歩くぐらいの気持があるなら、それだけではいけないのではないかと。

「心」で「感動」することももちろん大切ですが、本当に何かときちんと向き合いたいならば(今のわたしにとってはメシアンです)、「全神経を総動員して」聴いて「頭と心」で理解して「意識のもっともっと深い部分」で何かを感じたい。

というか、たとえば『世の終わりのための四重奏曲』を聴いて
「なんか、いいな」
と思ったら、
「どんな曲だろう」
と楽譜も見たくなるし、
「こんな不思議な曲を書いたメシアンって何者だ」
ってことで人物についても知りたくなるし、
「そもそもなぜこんな妙な編成なんだ」
と、曲の成立史も知りたくなる……。
そしていろいろなことが腑に落ちると
「なるほど〜! そうだったのか!!」
となり、「いいな」だった曲が「すごくいいわ♪」になる。

マーラー 交響曲のすべて』を訳しているときにも感じたのですが、曲の成立史とか歴史的背景を知ること、スコア・リーディングをすること、さらにはゲーテとかショーペンハウアーの書物を紐解くことによって、曲への理解度がずっとずっと増したと思うんです。

そうしてどんどん深みにはまっていくのが何とも気持がいいのです。

HMVへはこちらから
icon
愛の眠りの園いざメシアンの空間へ!
メシアン門を叩いてみたら、中から声が……
「Entrez! La porte est ouverte
tout le temps.」
おそるおそる中へ足を踏み入れました。
そこは、日常とは一線を画する異次元空間でした。
ひんやりとした空気に満ちた空間にぽっかりと浮かんでいるわたし。
足元には何もないのに、そこには恐怖とか不安という感覚は微塵もありません。
真っ暗な中で天から降ってくるような音がわたしを誘います。
感覚がとぎすまされていくのを感じます。
見上げると漆黒の空間のかなたに銀河系らしきものが拡がり、ところどころにオレンジ色やうす紫色の星雲が浮かんでいます。
心地よい……ひたすら心地よい……。

というのが、このCDを聴いて真っ先に浮かんだ情景です。

このドイツ・グラモフォンの「生誕100年記念アルバム」に収録されているのは、

・おお聖餐!
・愛の眠りの園〜トゥーランガリラ交響曲
・幼児イエスの口づけ〜幼児イエスにそそぐ20のまなざし
・愛にとどまる〜彼方からの閃光
・イエスの不滅性への賛歌〜世の終わりのための四重奏曲
・甦りしものとアルデバラン星の歌〜峡谷から星たちへ
・聖なる山の聖歌〜我らの主イエス・キリストの変容
・聖餐式

このアルバムがメシアンの代表作の中でもゆるやかな楽章を中心に構成されているだけあって(いわば「アダージョ メシアン」みたいなものですね)、一貫して上に書いたようなイメージが、頭の中で少しずつ様相を変えながら展開していきます。

ある部分ではスタンリー・キューブリック監督作品の『2001年宇宙の旅』の、またある部分ではタルコフスキー監督の『惑星ソラリス』の場面を思い浮かべました。

すごいと思うのは、不協和の音が連続していても、そこに神経を逆撫でしたり落ち着かない気持にさせたりということが全くないという点です。
深い瞑想に入るというか、心地よい空間に浮かんで、否定的なことなど考えもしなかった無垢な時代に逆行していくような、幸せな気持を存分に味わうことができました。

メシアンって、何となくバタイユとかブルトンっていうイメージがあったのですが、シュールというわけじゃなくて、もっともっと神秘的で陶酔的なものを感じます。
わたしが今まで親しんできた世界にあえて喩えるなら、ギュスターヴ・モローでしょうか。

さらに深入りすることにします。

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